高野ムツオ審査委員長 特選講評

■小学生の部

 

一茶まつり大賞

天国の祖父と見つけた流れ星    茨城県 笠間市立岩間第三小学校 望翔さん

かつて祖父に教えられながら流れ星を見つけたことがあったのでしょう。亡くなった今も二人で流れ星を探しているのです。

 

東京都知事賞

ニジマスがつられたあともおよいでる    静岡県 常葉大学教育学部付属橘小学校 眞子さん

釣られたあとも、どんな運命が待っているか、知らず懸命に泳ぎ回るニジマス。作者の優しい目がその姿をとらえました。

 

東京都議会議長賞

海水浴つばさの形にかわはむけ    北海道 小樽市立潮見台小学校 瑛達さん

海水浴で日焼けした皮がむけ出した。ゆっくり剥がすと翼の形。そうだ、海の中で鳥になっていたんだ。

 

足立区長賞

はりきって後部座席のうきわゆれ    東京都 足立区立弘道小学校 美乃さん

まもなく海に到着。わくわくする作者の気持ち。それが後ろの浮き輪にも伝わって弾んでいるのです。

 

足立区教育委員会賞

星空をほめて着がえるこまおどり    秋田県 八峰町立峰浜小学校 凛久さん

みんなで衣装に着替えて、さあ準備。空には星がたくさん顔を出し始めました。勇壮な駒踊りがまもなく始まります。

 

余別川体きずつけサケのぼる    北海道 積丹町立余別小学校 享俊さん

余別川の鮭。産卵のため、必死に上る姿が「きずつけ」の一語に的確にとらえられています。

 

水質調査鮎はまぶしいはら見せる    秋田県 八峰町立峰浜小学校 純平さん

水質調査は、鮎が帰ってくる川として適切かどうか、調べ検査することでしょう。鮎も感謝しているかのように光ります。

 

さかあがりにゅうどうぐもがしりをおす    福島県 会津若松市立城西小学校 ひなたさん

逆上がりの練習、なかなか上手にできません。でもやっと成功。入道雲の応援がユーモラス。

 

弟がねむると家もねむりだす    福島県 郡山市立芳賀小学校 昊雅さん

やんちゃで活発な弟、家中の人気者。弟が眠りにつくとお父さん、お母さん、お兄さん、そして、家も眠りにつくのです。

 

青あらし帯しめなおす二分前    埼玉県 さいたま市立沼影小学校 眞子さん

これから柔道の試合が始まります。その緊張感がみなぎります。折からの青嵐が闘志をさらにかき立てます。

 

雨ふってかさをせなかに見る花火    東京都 足立区立千寿常東小学校 千陽さん

せっかくの花火大会なのに、あいにくの雨。ぼんやりとしか見えない。けれど、しっかり楽しもうとする姿が描かれています。

 

あさがおははやおきまえにみをよじり    東京都 足立区立渕江小学校 ナイジェルさん

朝顔は早起きの花、でも、夜明け前から咲く準備をしています。そこに気づいたところに発見があります。

 

木々達の根までしみこむ滝の音    東京都 足立区立栗原北小学校 詠一さん

滝を取り囲んでいる木々は、生まれた時から滝の音を聞いて育ってきました。今日も滝の音が根にしみています。

 

ペンギンのおよぐ水にもさくらうく    富山県 高岡市立伏木小学校 結月さん

南極生まれのペンギンのそばに、散ったばかりの桜の花びらが浮いています。生き物同士の不思議な出会いがあります。

 

■中学生の部

 

一茶まつり大賞

ピカドンを無言で語るワンピース    東京都 世田谷区立梅丘中学校 真彩さん

「ピカドン」は原子爆弾のことです。資料館の熱線で焦げたワンピースから原爆の恐ろしさを知った衝撃が伝わってきます。

 

東京都知事賞

卓上の地球儀ながめ夏終わる    千葉県 筑波大付属聴覚特別支援学校中学部 泰輔さん

雨続きだったり、勉強に追われたり、でかけられない事情はさまざま。しかし、心は世界を駆け巡っているのです。

 

東京都議会議長賞

雲の峰俺のお母にゃ勝てないな    東京都 八王子市立みなみ野中学校 凜空さん

雲の峰にふと母の姿が重なったのでしょう。その通り、母親に勝てる人はいません。ユーモアもたっぷり。

 

足立区長賞

パタパタと団扇であおぐ孤独感    東京都 葛飾区立亀有中学校 瑶夏さん

団扇でいくらあおいでも暑さも孤独感も募る一方。なんとかしたい複雑な心理が実にリアルです。

 

足立区教育委員会賞

水泳のあとの水面に空がある    福島県 会津坂下町立坂下中学校 望月さん

泳ぎ終わってプールサイドに立った時、プールに空が映っていたのに気づきました。その時、空を泳いできた気持ちになったのです。

 

黄金虫おぬしもプール見学か    千葉県 成田市立公津の杜中学校 陸さん

けがをしたのでしょうか。大好きなプールに入れません。仕方なしの見学。やってきた黄金虫に同情を求めたのです。

 

旅に出て金木犀の匂う奈良    東京都 目黒区立東山中学校 利空さん

あちこちを旅行したのでしょう。奈良で印象に残ったのは金木犀の匂い。古都に似合う匂いですね。

 

雷と家との距離は約二キロ    東京都 大田区立大森東中学校 のはらさん

ごろごろ鳴り出した雷。その音から我が家まであと二キロぐらいと想像しました。距離感に雷の怖さが表現されています。

 

船窓の夕日が告げる晩夏かな    東京都 板橋区区立上板橋第一中学校 志保子さん

船旅の最中でしょう。窓にあふれる夕日に夏の終わりを実感しました。船旅もそろそろ終わる頃なのでしょう。

 

氷海のアザラシカメラへ一歩ずつ    東京都 葛飾区葛飾けやき学園 高砂中学校 侃冬さん

テレビカメラでしょうか。近づいてくるアザラシの動きが生き生きと感じられます。背後の氷海も見えてきます。

 

シュノーケル私は巨大な熱帯魚    東京都 玉川学園中学部 梨乃さん

シュノーケルを装着して南の海に潜ったのです。熱帯魚とともに泳ぐ夢のような気分にあふれています。

 

夏だよと手紙を配る海の風    東京都 足立区立第十二中学校 綾太さん

沖から吹いてくる潮風を手紙に喩えました。それは楽しい夏の海への招待状なのでしょう。

 

にじ見えるしらない同士声かける    東京都 足立区立西新井中学校 伊樹さん

大きな虹が目の前に懸かりました。虹に気づいてもらいたくて、つい声かけ合っている微笑ましい姿が見えてきます。

 

雲の峰をベッドに眠る夢を見る    神奈川県 小田原市立白山中学校 花梨さん

眠る時に思い出した入道雲。その姿を頭に浮かべたまま眠ると、きっと、雲はそのままふかふかベッドになるにちがいありません。